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ある屋敷の広い会議室。長いテーブルの周りには沢山の椅子が並び、そこに座っているのは顔に深い皺の刻まれた者が多い。
「…で、魔界の様子は?」
「いつもと変わらず、じゃな」
「そうか…聞いておるのか?フローディア!」
神妙な顔付きで話し合いを進めていた老人たちを見ながら大きな欠伸をした青年に対し、声を荒げて注意をするがその声は彼の耳を素通りしていく。
「うっせぇな…ンな事に興味はねぇんだよ」
「大老に対して何という口をっ!」
初老の男性が思い切り机を叩き、椅子を倒して立ち上がると周囲から音は消え去った。
薄暗い部屋にはシャンデリアから零れるような明かり。その明かりが照らし出す青年の髪は滑らかな銀糸、そして瞳は深い紫色の宝玉のような輝き。
「何でも勝手にやれば良いだろう…ただし、アイツに手を出したら…ぶっ殺す」
完全に飽きて輝きが鈍っていた青年の瞳に一瞬にして鋭利な刃のような光を帯びる。
「おい、何処へ行くのだ!」
「…帰るんだよ、大体…MOON CRYは十年前にあったきり…あの時だって被害は無かった」
「それは…」
「無意味な事は好きじゃない…俺は帰るぞ…ミューラス」
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