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白く深く積もった雪が世界を覆い尽くしてからしばらく経った時、森の中の更に奥深くでは凍えた空気を焼き尽くすような魔力が敵対した相手を焦がす勢いで放たれていた。
「おっかないなぁ…炎の魔術師さん」
「あら…誇り高き戦狼(ワーウルフ)の一族が何を言ってるのかしら?」
綿毛のような雪を巻き込んだ風が木々の間を縫うように吹き抜け、男性の濃紺の髪と女性の灰色の髪を躍らせる。
髪と同じ色をした男性の瞳には困惑、そして女性のサファイアの瞳には強い敵意と決意。似た色の瞳に宿っているのは全く違う感情であり、互いの魔力も相対するものだった。
「はぁ…無駄な争いは嫌いなんだけど?」
「なら…なんで、こっちに来たのよ!大人しく魔界で暮らしていればいいじゃない!」
「なんでって…っ!いきなりかよ」
女性が着てきた黒いロングコートの裾は風に靡いてバタバタと音をたてて暴れ、突くように出された左手からは容赦なく業火の玉が男性に向けて放たれ、右手では更に魔力を練り込んで小さな火の玉を大量に空気中に生み出していく。
「おいおい…何でそんなに殺気立ってんの!?」
「魔族が大嫌いだから!それ以外にアンタに喋る理由なんて無いわよ!」
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