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女性は一気に炎を放つと動きにくそうなロングブーツにもかかわらず雪に埋もれた大地を蹴って男性の懐まで入り込む。一方の男性も最低限の動きで炎を避けると飛び込まれる前に後方へと飛び女性の手刀を紙一重でひらりとかわしていく。
好戦的な女性に対し、男性はズボンのポケットに両手を突っ込んだまま魔力を使う気配も攻撃を行う雰囲気すら漂わせてこない。彼のそんな行動が彼女の神経を逆撫でするらしく、並びの良い歯をグッと噛み締めさせる。
「馬鹿にしてんの?」
「まさか、あんたが強い事は分かってる…一体何者?」
「…私はミューラス・ベルヴィット…フレイム・マスターよ」
女性、ミューラスが己の名と実力の証とも言える異名を凛と通る声で言い放った。すると男性は驚いて目を一瞬大きくしたが、困ったように頭を掻くと深いため息をついてミューラスを見る。
「マスターだったとはね…マジで退く気は無し、か…なら相手してやるよ、俺はウルフのシュルバ・ビラグン…邪魔者抜きでやろうぜ」
左手を何か合図を送ったシュルバ。すると周囲の木々の影から多くの狼たちが低い唸り声を響かせながら姿を見せてきた。
「お前ら、絶対に手ぇだすなよ?」
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