Ⅰ: MOON CRY~出逢い、満月は泣く

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 魔術師だけが暮らす町のほぼ中心に建てられている巨大な城のような建物。ここは魔術師のトップを勤め、纏める存在である《マスター》と呼ばれる者たちが六人住んでいた。  魔法と呼ばれる不思議な術には五つの属性がある。木、火、土、金、水。基本となるこの五つの属性、それを扱うには特殊な力が必要とされている。その力を《魔力》と呼び、この世界では魔力を持つ者は稀で、その僅かな人々が魔術師と呼ばれていた。  彼らは長い年月、対立している種族が居た。  ヴァンパイア、ワーウルフなどの伝説上の生き物とされていた存在。通称(魔族)。彼らは《魔界》と呼ばれる世界に住んでいるが、ごく稀にこちら側へとやってくる事がある。 《MOON CRY》  満月の夜。雲一つ無い夜空から、まるで月が泣いて滴が零れ落ちるかのように大粒の雨や雪が降り注ぐ現象を魔術師たちはこう呼んでいた。この現象が起こる時、こちら側とあちら側の狭間に存在する壁が崩れ、互いの世界を楽に行き来が出きるようになってしまう事がある。  満月が泣く夜、魔術師たちは決して外には出て来ようとしない。  一部を除いて。
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