しあわせの鍵

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  「…え」 綾瀬の口から才蔵の名前が出るのが意外で。一瞬頭ン中真っ白になった、他に理由なんてない。 「彼女がいないことは判ってるんだけど、好きな子がいるかどうかまでは判らなくて。塚本くん知らない?」 「…知らない」 「ほんとに?」 「聞いたことない」 「そっか~」 じゃあチエにも結構望みがあるってことね―…と嬉しそうに笑う綾瀬に、俺も曖昧に微笑ってその場を後にした。 (好きな子…才蔵に?) 別にいたっておかしくない。寧ろ今まで一度もそんな話がなかったことの方が不思議だ。 (いや…) もし今までに好きになった子がいたんだとしても、今いるんだとしても、それを俺に言う訳ない。 「嫌われてんだっけ俺」 ずっと、友達だと思ってたのは自分だけだった。 胸が痛む、 他に理由なんてない。  
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