第一話 「朝日」

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空がゆっくりと白んでくる。 ずっと遠くの方から、太陽が昇ってくるのを、僕は静かに見守っていた。 弱々しくも冷たい風が、頬を撫で身震いする。 季節的に、温かくなってきたからといっても、早朝はまだ肌寒く、持っていた毛布を、首元まで包み寒さを凌ぐ。 夜中から毛布に包まったまま、庭にある木のベンチに座り、朝日を待つこと数時間、流石に眠気がさしてきた。 僕は両脇に座っている二人の顔を交互に見た。 左側には、皆で朝日が見たいから徹夜しようと言っていた、三つ年下で妹のミントが、僕の腕につかまりながら、結構前から眠っている。 先程の弱々しい風が、ミントの長めの栗色の髪を撫でいった。 右側には、四つ上の兄リュートが眠そうな顔で、あくびをしながら、その栗色の短い髪を掻いている。 眠たいのならミントみたいに眠ればいいのに。 僕はそんな律儀なリュート兄さんと、たまにわがままになるが、思いやりのあるミントが好きである。 気が付くと、遠くに見える山の向こうから、さっきよりはっきりと、太陽の光が見え始め、山が光を背負い輝いて見える。 当たりを照らし出す光は、黒色にしか見えなかった草花を本来の色に変えていき、まるで太陽という画家が、光の筆で色を塗っているようだ。 「ミント。 そろそろ起きよ?」  ミントの体を揺すり、起きる様に促す。 「後5分だけ……ね」  ねって。 そろそろ起きないと、朝日が昇りきっちゃうよ。 何度か身体を揺らしてみたものの、彼女には全く起きる気が無いらしかった。 「はあ……」  ため息を吐きながら、落ちかけている彼女の毛布を掛け直し、優しく髪を撫でる。 「兄さん。 ミント起きないよ……って! 寝てるし!」  さっきまで起きていた筈の兄さんは、寝息を立て気持ち良さそうに寝ていた。 ため息すら出ない。 なんで寝ちゃうんだよ、さっきまで起きてたのに。 「なんか……どうでもいいや」 「何がどうでもいいの?」  がっくりして独りごと言っていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。 声の方に顔を向ける。
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