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そこにはミントよりも長い栗色の髪をなびかせ、黒いガウンを着たミラン母さん。
そして、その後ろに執事のセバンヌと、メイドのサニアが立っていた。
セバンヌとサニアは、僕と目があい会釈し、母さんより後ろの方で、様子を見ている。
「母さん」
「あらあら。 二人とも寝ちゃったの?」
母さんが僕らの方へ近付く。
そのままベンチに寄り掛かると、ミントの頭を撫でて微笑む。
母さんは入浴してきたのか、石鹸のいい香りがする。
よく見ると、髪がまだ少し濡れているように思えた。
「あら。 気が付いた? 新しい石鹸に変えたのよ。 どうかしら?」
母さんは後ろから僕の首元に手を回し、ベンチ越しに僕に近づく、何の匂いかはわからないが、ほのかにいい匂いがした。
「いい匂いだよ」
「そうでしょ? 昨日街に行った時に買ってきたのよ」
嬉しそうに話す母さんは、僕の頬に自分の頬を優しく重ねる。
「アランにも、いい匂いをおすそ分け」
「うん」
嫌じゃないのに、凄く恥ずかしい感じがする。
こう言うふうに、母さんと触れ合うのが、久しぶりだからだろうか。
「あら? 照れてるの? アランはおませさんね」
「照れてなんかいないよ!」 慌てて母さんから視線をそらし、朝日を見つめる。
「……」
母さんは僕の頭を撫で続ける。
そろそろ止めてほしいが、僕は止めなかった。
「アランは眠たくないの?」
「うん」
「リュートもミントも寝ちゃってつまらなくないの?」
「うん」
「ママは眠たくなっちゃったから、先に帰ってもいいかな?」
「うん」
「朝日……綺麗ね」
「うん……とても綺麗だ」
何気ない会話を交わし続ける。
僕は、山の上を通り過ぎた太陽を、静かに見つめ、陽光が空を照らしていく様を見つめていた。
「アラン。 そろそろ、二人を起こしてお屋敷に入りましょう」
「僕は……まだ見てるよ」
母さんを見もせず、煌めく空だけを見つめる。
「そう……早く戻ってきなさいね。 今日はお昼から剣の稽古があるから」
「うん」
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