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「…………」
夢をみていた。
赤ん坊の僕は、知らない人の腕に抱かれ、荒野をさまよっていた。
「にい……」
どこからか声が聞こえてくるが。
僕を抱く男の声ではなく、女の声だ。
男はどうやら、今の声には気付いていないようで、ひたすら荒野を歩きつづける。
「…………」
たまに男が、僕の顔を心配そうな顔で見ては、布で僕の顔を拭く。
男は右目が見えないのか、常につむったままになっている。
「にいさま」
また女の声が聞こえてくる。
一体誰なんだ。
だが赤ん坊の僕は、まともに身体を動かすことが出来ず、辺りを見渡す事が出来ない、見えるのは、男の上半身だけ。
「…………」
まてよ、男の上半身と空しか見えないのに、どうして荒野に、いるって知っているんだろう。
「兄様!!」
誰かがまた大きな声を出している。
まだここにいたいのに、誰かが僕を起こそうとしている。
思い出した、この声は確か、僕の妹の。
「ミント……」
ゆっくり目を開けると、ミントが楽しそうな表情で僕の上にまたがり頬をつまんでいる。
少し痛い。
「兄様やっと起きた」
少ししか寝ていない気がするが、朝寝坊の常習犯のミントが起こしに来ているということは、それなりの時間なんだろう。
夢を見ていた気がするが、どんな夢だったか思い出せない、確か世界を救うために、魔王を抱き抱えたまま、山の火口に飛び込んだっけ。
いや、違うな。
「ミント……今何時?」
ミントは僕の頬をつねるのを辞め、時計を探しているのか、部屋をキョロキョロとみている。
「今は……一周ノ十一時半だよ」
さて、意地悪な僕は、時間を見るのが苦手なミントに、意地悪な問題をだす。
「総時間は?」
「え?……えーと」
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