第二話 「剣」 ~前編~

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「…………」  夢をみていた。 赤ん坊の僕は、知らない人の腕に抱かれ、荒野をさまよっていた。 「にい……」  どこからか声が聞こえてくるが。 僕を抱く男の声ではなく、女の声だ。 男はどうやら、今の声には気付いていないようで、ひたすら荒野を歩きつづける。 「…………」  たまに男が、僕の顔を心配そうな顔で見ては、布で僕の顔を拭く。 男は右目が見えないのか、常につむったままになっている。 「にいさま」  また女の声が聞こえてくる。 一体誰なんだ。 だが赤ん坊の僕は、まともに身体を動かすことが出来ず、辺りを見渡す事が出来ない、見えるのは、男の上半身だけ。 「…………」  まてよ、男の上半身と空しか見えないのに、どうして荒野に、いるって知っているんだろう。 「兄様!!」  誰かがまた大きな声を出している。 まだここにいたいのに、誰かが僕を起こそうとしている。 思い出した、この声は確か、僕の妹の。 「ミント……」  ゆっくり目を開けると、ミントが楽しそうな表情で僕の上にまたがり頬をつまんでいる。 少し痛い。 「兄様やっと起きた」  少ししか寝ていない気がするが、朝寝坊の常習犯のミントが起こしに来ているということは、それなりの時間なんだろう。 夢を見ていた気がするが、どんな夢だったか思い出せない、確か世界を救うために、魔王を抱き抱えたまま、山の火口に飛び込んだっけ。 いや、違うな。 「ミント……今何時?」  ミントは僕の頬をつねるのを辞め、時計を探しているのか、部屋をキョロキョロとみている。 「今は……一周ノ十一時半だよ」  さて、意地悪な僕は、時間を見るのが苦手なミントに、意地悪な問題をだす。 「総時間は?」 「え?……えーと」
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