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クレインはバーンスと別れてから街中を当てもなくぶらぶらと歩いていた
「おいおい、気分が乗らないなら断りゃ良いじゃないかぃ?」
路地の物影から装束の男が現れた
「バルか…」
バルはクレインと同じバルディウスの密偵である
ただクレインと違い彼は私掠と情報操作を専門としていた
「どうせお優しいお前の事だ…生きるためとは言え罪ない人間を殺すのに迷ってんだろ?」
「私はそんな感情は持ち合わせていない…」
クレインが短く答える
「全くよ。オラみたいに暗殺関係は断りゃ良いのに…」
バルが苦笑いをして言う
「誰かが…誰かが手を汚さなければこのくだらない戦いは終わらない…それなら命を奪う事に何も感じない私は適任だ」
「やれやれ…まあ、止めはしないが…オラ達は密偵だ。くれぐれも相手に情けをかけないようにな」
バルはクレインの肩を軽く叩き再び路地裏へと消えた
それからしばらくの間、クレインが一人で歩いていると背後に殺気を感じた
(…!?)
剣に手を当て後ろを向いたが怪しい人間は居なかった
殺気が気のせいかどうか確かめるためクレインが人気の少ない路地に入ると前から二人、後ろから三人の男が現れた
(ちっ…囲まれたか…手練れの密偵が五人…一人でいけるか?)
「貴女は…クレイン・エルナさんですね?」
男達は表面では紳士的な態度だったが気配を読めない者でもわかるくらいの殺気を放っていた
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