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「じゃあ、いつも通り荷物運び頼むわ。」
班長の男は義裕に言う。
この養成所では罰則はすなわち雑用を表す。そして、義裕は罰則の常連なのだ。
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「はぁ…」
義裕は荷物を延々と運ぶ単純作業にため息を漏らす。
「おーい、櫻井!まぁた遅刻か?」
罰則の度に倉庫に来て荷物運びをしている義裕は整備班の人達とすっかり顔見知りとなっていて向こうも気軽に声をかけてくる。
「困ったお婆さんでもいたか?」
お人よしな性格の義裕は、よく困ってる人を助けては遅刻して罰則をかせられているのを知っている彼等はよくその事で義裕をからかっている。
「引ったくりだよ。」
「その引ったくりのおかげで俺らが楽になって感謝感謝だな。」
整備班の面々は揃って爆笑する。
「仕事しろよっ!」
「残念。上官命令でおまえの罰則に手を貸すような行為をしたら俺らも罰則になっちまうんでな。」
「ちっくしょ~っ」
義裕は整備班の連中にも見放され、途方もない量の荷物にうんざりするのであった。
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