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「やっべぇ! もうこんな時間かよ!」
慌てて準備を済ます華音。
朝飯も食べずに、そのまま部屋を出る。
「…行ってきます……」
自分以外は住んではいない部屋なのに、そう言う華音。
その表情は、どこか悲しげに見えた。
「不味いな、『アレ』を使わないと完璧に遅刻だな」
普段、滅多に使うことのない代物。
アパートの駐輪場に止められた『バイク』。
ガソリンタンクに富士日章のペイントが施されたバイクで、製品名はZⅡ。
これで行けば学園には間に合う。
しかし、自分が暴走族であることがバレてしまう。
頭を振り、誘惑を振り払う。
バレる。それだけは避けなければならない。
仮にも、元皇帝の初代総長の証でもある富士日章のZⅡ。
バレなくても、目を付けられてしまうかもしれない。
そうするとボロが出てしまう。
自分が我慢など出来る筈がない。
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