1章:転校初日

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3分も経たないうちに、二人は叩き伏せられた。 喧騒が止み、己を取り戻した華音は、自分がやってしまった事を後悔した。 見られてしまった。 抑えたとはいえ、圧倒的な暴力で物を言う自分を。 初日にして『あの人』との約束を、半分破ってしまった。 つくづく自分が、意志の弱い人間だと思い知った。 少女は、何も言わず、只華音を真っ直ぐに見つめていた。 その瞳に、恐怖の色は無い。 何の淀みもない、純粋な色だった。 とにかく、ここに居てはまた二人が起きるかもしれない。 面倒事はごめんだと、華音は思い、とっさに呆然と立ち尽くす少女の手を引き、学園に向かって桜並木を走り出した。 「えっ!? あのっ、ちょっと……」 少女が困惑の声を上げる。 少しだけ、少女の頬が赤く染まっているのに、華音は気付いていない。 「ごめん、話は後だ。今はここから離れなきゃ」
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