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3分も経たないうちに、二人は叩き伏せられた。
喧騒が止み、己を取り戻した華音は、自分がやってしまった事を後悔した。
見られてしまった。
抑えたとはいえ、圧倒的な暴力で物を言う自分を。
初日にして『あの人』との約束を、半分破ってしまった。
つくづく自分が、意志の弱い人間だと思い知った。
少女は、何も言わず、只華音を真っ直ぐに見つめていた。
その瞳に、恐怖の色は無い。
何の淀みもない、純粋な色だった。
とにかく、ここに居てはまた二人が起きるかもしれない。
面倒事はごめんだと、華音は思い、とっさに呆然と立ち尽くす少女の手を引き、学園に向かって桜並木を走り出した。
「えっ!? あのっ、ちょっと……」
少女が困惑の声を上げる。
少しだけ、少女の頬が赤く染まっているのに、華音は気付いていない。
「ごめん、話は後だ。今はここから離れなきゃ」
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