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そんなこんなで今に至る。
「そういえば、名前を言い忘れてました。私は『白神 遊璃』です! 王子様の名前はなんて言うんですか?」
例えるなら、それは向日葵のような笑顔。
なんの屈託もない、心からの喜びをそのまま表した笑顔。
その笑顔が、華音には眩しくて仕方なかった。
穢れを知らない少女。この世の淀んだ部分を知らないで育たなければ、こうはならない。
一瞬でも、そんな遊璃の笑顔に嫉妬してしまった自分が、華音は恥ずかしがった。
『あの事件』から自分は、心の底から笑った事があっただろうか。
否、一度たりとも、ありはしなかった。
しかし、華音の中に後悔の念は無かった。
自分は良かれと思いやったのだから、後悔はしない、してはいけないのだ。
自然と、華音の表情に影が刺した。
「王子様? どうしたのです…? ……王子様!?」
遊璃に怒鳴られ、意識が戻った華音は、ハッとして遊璃に視線を向けた。
名前か…そういえば、言ってなかったな。と華音は囁いた。
「『早瀬 華音』だ。それと、俺を王子様と呼ぶのは止めろ…。そんな性分じゃない」
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