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遊璃を屋上に放置してから、約10分が経過したころ。
華音は職員室にたどり着いていた。
迷う事もなく、無事到着したにもかかわらず、華音の表情は険しかった。
職員室など、行くのは説教される時だけだったせいか、自然と険しくなってしまうのだ。
コンコン!
扉をノックして中に入る。
職員室内の雰囲気はどこも一緒なのか、華音は一瞬、前の高校が懐かしく感じた。
「失礼します。…転校生の『早瀬 華音』です。遅れてすんません」
何人かの教師が、華音の言葉に気付き、視線が華音に集中する。
職員室独特の、煙草の匂いにコーヒーの匂いが混じった感じ。
華音はこの匂いが嫌いだった。
昔、自分をいびる教師の匂いそのものだからだ。
典型的な体育教師で、ついでに口臭が激しかった。
「おお、早瀬君。待ってたよ、さぁ…こっちに来なさい」
おっとりとした声が、職員室に行き届く。
声の主は、奥の机に座り手を上げていた。
総白髪の老人。
如何にもお人好しな顔をしており、その顔は穏やかに微笑んでいた。
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