その10日前

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「うるせえ。あのな、人が殺せるってことは、神を殺せるってことなんだよ」 「は?」 私は身体の奥深くから声を出した。仲島さんは嬉しそうに笑い、芝居掛かった仕種で人差し指を立てた。 「神を殺すのは簡単だろう」 「人も簡単に死ぬんだろ?お前には簡単なことしかないのか」 加藤さんは漸く笑った。仲島さんと同い年の筈なのに、渋い。老け込んでいるのかもしれないし、疲れているのかもしれない。目付きはまるで憑かれているかのようだ。 「やろう、と思う決意と暇と金さえあれば大低のことは簡単だ。神だって殺せる」 「どうやるんですか?」 「信者を全員ぶっ殺せばいいんだ」 結局それかよ。私は呆れ笑いを浮かべた。 端から聞けば、仲島さんは相当怪しい人に見えただろう。 「単純だなあ」 私の言葉が不服だったのか、仲島さんは口をへの字にした。 「単純なこと程考えないんだよ、誰も」 .
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