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誘拐されて気付いたら・・・なんて本を読んだことがあるだろうか。
読んでないやつは読んで欲しいと、刹那に思った日が今日だった。
気付いたら異世界だとか、その類いよりこれは質が悪い。
そう起きた瞬間、それらの本の主人公を思い出した。
“こういう時”ああ、こういう気持ちに陥るのか、と。
異様な吐き気で目を醒ました。
「ぅ、あ、あ・・・。う゛っ!」
もう吐く、と思った瞬間に、目の前に紙袋が入っているビニール袋を現れた。
「吐いてください。どうぞ」
という声に応じる前に僕は袋を取り、思い切り吐いた。
「・・・っ」
「大丈夫かい?亜っくん」
「げほっ、げほげほ・・・。なき、はらさ、」
「そんな上目遣いで見ないでくれ。襲っちゃうじゃないか」
さっきの場所でないことに気付く。
何故ならここは、酒の臭いが無いし、テレビも無い、あの闇医者もいない。
あるのは僕が寝ていたダブルベッドだけだ。
他には蛍光灯しかない。
「ここ、・・・どこですか」
「私の寝室さ」
「・・・ベッド以外に何も無いんですね・・・」
くすりと、哭原さんは笑うとポケットから二つのボタンが付いたリモコンらしき物を出した。
「そう見えるかい?」
ガコン!
そんな音がした瞬間に部屋が“変型”していった。
ガコンガコンガコンガコンガコンガコンガコンガコンガコンガコンガコン!!
気が付くと、そこは六畳くらいだった寝室が二十畳くらいの部屋に変わり、本棚やテレビ、テーブルは勿論、キッチンまで出現していた。
「あー・・・、なんというか」
すごいけど・・・有り得ない。
というか、酒で頭が痛い。
「私の寝室の秘密さね。さ、働いて貰うよ」
「・・・は?」
働く?
「おっと、エクステがもう少しあった方がいいかね?」
そこで気付く。
僕の容姿が変わり果てていたことを。
髪が何故か肩まであり、服は・・・、
メイド服だった。
「戦線(せんせん)、あとは頼んだね」
「はい」
戦線と呼ばれた白髪の少女はアメジストのような瞳で、戸惑う僕に話しかけた。
「戦線千先(せんせんちさき)です。こんにちは」
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