徘徊(廃界)

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夏。一文字で言えばそうだろう。 正しく言えば、7月1日午前0時。 梅雨明けに近い蒸し暑い時期に値する。 賭が退院してここ数日、賭はクーラーのある唯一電気が通った穴空きのビルで今頃何にも警戒心とか何にも考えず、平穏に寝ていることだろう。 僕はといえばレッツで愛車の中で夜更かし。久々に読書で夜を明かしたいと思っている。今丁度、森博嗣先生様の『スカイ・クロラ』読み返し59回目を読み終えて、さて次はどれを読むかと考えていた。西村健先生様の『劫火シリーズ』が良いものか、はたまた芥川龍之介先生様の『羅生門』と『蜘蛛の糸』がいいか、僕の頭の中の天秤はどちらをかけても揺れ動くことはなく、こういうとき、僕は2つ同時に読むことにしている。右目で『劫火シリーズ』、左目で『羅生門』。僕の身体能力を活かした読み方だった。 化け物、万歳。 よし、次は西尾維新先生様の『化物語』を読もう。 ざりり。 「人間がいる」 「人がいる」 「居る」 目を硝子先の方へ向けると、暗闇に三人の五歳くらいだろうか。おんなじ顔をした3つの顔が、 浮いていた。 「紅」 「赤」 「亜か」 一言言ってはまた一言。ついでに最後にもう一言。彼女らは言った。 「・・・?」 久々の敵かと思い、二冊の本を置く。 「1、」 「足す、」 「6、」 ・・・?。いきなり足し算し始めたし。 「「「は、16」」」 ・・・違う、7だ。それは。 「ニ八、十六」 「四四、十六」 「八ニ、十六」 掛け算はバッチリかよ。 「見つけた」 「見付けた」 「見つめた」 一人また少し違うんだけど。 そう言うと彼女らは闇へ消えて言った。
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