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綺麗事を並べたら切りが無くて、懺悔を述べても切りが決まらなくて、同情は帰ってこない同胞の嘆きの声。
お前は生きろ。お前は死ね。
庇って死んで、生きるために死んで、残った僕らなんて、亜行の脅威を自分で実感して痛感した。
実験所で宇とこんな話をしたことがある。
『亜はさ、世界の果てって見たことあるか?つまり世界の一番端さ』
宇とは仲が結構良かった。“え”は正直怖かったし、“お”は近寄り難かった。衣はいつも僕にくっついてたな。
『世界の果てなんて、あるわけないだろ?』
僕は言った。
『あはっ、どうしてそう言えるんだよ』
意地悪そうに宇は笑った。
『地球は丸い。丸いから果てなんてない。当たり前の知識さ』
『それは1つの情報であって現象であって常識の話だな』
『だってそうだろう?』
『じゃあ、こんなんどうだよ?俺の出発したところを始点として地球を一周するんだ。そうしたら一応始点がシューテンじゃないか?』
『まあ・・・、そうだな。一つのルールからのルートとしてなら』
『一つのルーツからのルールさ』
『あまのじゃく』
『本ヲタクに言われたくねぇな』
『別に良いじゃないか。本が好きでも』
『俺は四歳、お前は五歳。五歳は普通、聖書なんて読まないらしいぜ?』
『うるさいな。読むものがなかったんだ。だったら、僕たちがこんな話を成立するのもおかしいんだ』
『あはっ!違いないな』
ジリリリリリ!
『宇、お前呼ばれてるぞ』
ぴーぴーぴーぴーぴーぴー!
『亜だって呼ばれてんじゃん。嫌だね、俺たち二人でガキでも産ませんのか?』
『気持ちわるいこと言うな・・・』
扉を開けるとき宇は言ったんだ。
俺たちは明日生きるかじゃない、明日はどう生き延びるかを考えるんだよ、と。
屁理屈と矛盾や無理ばかり言う宇が最もらしいことを言ったのは、確かこれが最初で最後だった。
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