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僕らは車から降りて一面に広がるまだ昼なのに薄暗い曇天の墓場の縁に立っていた。夏なのに、ここは何故だか少し寒いくらいの気温。
「ここ、どこだぁぁぁぁぁあああああ?!」
と、言う問いに淡白に僕はいう。
「墓場」
「んなこたぁ、わかってるでヤンスよ!亜ーくん!わしらどこにおるかと訊いとるんじゃわれぇ!」
「賭、お前気持ち良いほど口調可笑しくなってるぞ」
「どげんとせんといかん!」
「は?“土管と線と遺憾”?」
今のはなんだっけ。日本のなまり・・・だっけ。
いや、じつはここも日本だけど。実はね。
「説明しようか」
僕は言う。
「お願いします!」
すぅっと息を呑んで僕は一気に言った。
「通称“夜な夜な墓場”。真昼なのに必ずここはいつも曇天か雨天か嵐。太陽の日が降り注がない呪われた墓場で天気もその呪いから日が出ないと言われる。“平安”から“廃絶”まで、魑魅魍魎、百鬼夜行と古くから残された世界遺産にも一応登録してある由緒正しい墓場。因みに、曇天の日は至って正常で雨天が幽霊が出てきて、タップを踊り、嵐の日はなんでも幽霊が社交ダンスを踊っているとか。捕捉すると、夏場が幽霊が一番出るらしい。良かったな」
ポンと賭の肩をそう言って叩くと、賭は見事に立ったまま気絶していた。
「もう一つ捕捉、これは暇から聞いた話で半分以上幽霊だのなんだのは暇のとんちだ」
ここ、よく覚えておくように。
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