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舞い散る桜唄
「私の両親は交通事故で死んだの。
身寄りのない私を引き取ってくれたのが祖母。
でもその祖母も私が小学校上がる前に死んだ。
祖母の葬式に遠い親戚が私を引き取ってくれた。
嬉しかった、私の道に光が差したと想ったの。でも……………」
亜莉菜はそこまで言って口を閉ざした。
俺は、抱き締めている亜莉菜を横目で見た。
「親戚に………捨てられたんだ」
決意して紡がれた言葉は、残酷な言葉だった。
俺は息を呑んだ。
捨てられたって…。
「この間…その親戚に捨てられた。私ね、元々身体が弱かったんだ。体調を直ぐに壊してた。
でもそれが段々酷くなっていって、私もおかしいって思って、病院に行ったんだ。
そしたらさ、病気が見つかって…。未来の無い私は捨てられた」
「私にはもう、帰るべき場所が無いんだ」
亜莉菜の言葉が、今分かった。
『私には、もう未来なんて無い』
この言葉の意味が…。
「私ね、その親戚とはあんまり合わなかったの。親戚も仕方無く私を引き取ってくれたみたいだから。
だから、だと想うよ。だから、私は捨てられた。
分かるの、この身体が、病気によって蝕んでいくのが…」
哀しそうな瞳。今すぐにでも泣きたいんだろう。
けれど、必死に絶えて、泣かないようにしている亜莉菜。
何で、そんなに強がるんだよ。
「俺以外いないから、泣けよ。でないと、お前苦しいだろ?」
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