memory1 骨董品と踊り子

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 世界に朝が来れば、当然、監獄島のユーリ邸にも朝は訪れる。  その邸の主のユーリがどんなに拒んでも、時間は廻って太陽は上るのだから仕方ない。  柔らかい感触と甘い匂い。ユーリが瞼を開くその先に甘栗色の髪を肩まで伸ばした下着姿のルティアナが眠る。  ルティアナの存在に、ユーリは反射的にベッドから飛び降りようともがいたが、その反対側には、白髪を背中まで垂らしたピンク色のネグリジェを纏ったネリーが、静かな寝息を立てていた。  ユーリは、あろうことか二人に挟まれた格好で寝ていたらしい。  挟まれたまま、記憶を辿る。正常な男の感覚ならこの際どいシチュエーションに喜び半分、驚き半分が妥当なのだろうが、ユーリにはこの異常極まりない事態を楽しむ余裕も無く、目線を浮つかせた。  昨日の行動を一から整理する。朝起きてから、昨晩眠りに就くまでの行動を脳裏内で組み立てて行く。  昨晩は、マナという娘の歓迎会だった。飲み干した葡萄酒の記憶を最後にベッドに辿り着くまでの経緯の所々には、空白が存在する。 (ええと)  胸中でぼやき、二人を起こさぬようにベッドを降りたユーリは、羽織っていた白衣を脱ぎ捨て、新しい白衣を着直し、気持ちよさそうに寝息を立てる二人に一瞥くれた。  甘栗色の髪を乱して寝ている女がルティアナ。白髪のシーツを握って丸まって寝ている娘をネリーという。  ダブルベッドとはいえ、良く三人も収まったと改めて思う。
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