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―――花ハイツカ散ルノヨ。
「だから綺麗なのよ」
そう君は言った。
――――――――――
あの日、僕はカメラを構えていた。好きな桜の木に向けて。
でも、かろうじて桜だとわかるくらいにしか写っておらず、桜はピンボケして写ってた。
―――――――――
春、桜に心奪われて、恋心。
その下に何人集えど、振り向かず。
桜、恋する相手はどこ吹く、風。
緩く、風そのヒラをさらってく。
淡く燃ゆる、記憶の片。
春の夕暮れ、傘を叩くは雨か、涙か。
色あせた昔のアイドルのポスターは渇いた風に吹かれていて、アスファルトには、桜が散る。
終わった恋よ。と、熱をあげ加速する風はまた、何処へ吹く。
アスファルトに散る桜を叩くは、雨か、涙か。
散らかった記憶のヒラ。
――――――――――
何度も写真をみた
何度も何度も写真を見ていた。
あの日、僕はカメラを構えていた。大好きだった桜の木を、写した。
でも、桜は霞んでた。
其の下、
君は笑ってた。
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