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泣き叫べども、声は届かない。哀願しようとも、聞き届けられない。涙をこぼそうとも、視界に留めてはもらえない。
染まり、汚され、そうして朽ちていく。
無造作に扱われた体。
放り投げられ、そうして叩き付けられる。
まるで、そうすることこそが正義であるかのように。
希望は絶望に変わり、打ちのめされる。
揺らめく感情。
凍てついていく想い。
その代わりに芽生えたもの。……それは、彼らに対しての。
そうして、差し出されたそれが手元に還ってきたその時には、もう既にそれはなくなっていた。
奪われてしまった炎は。
「……っ!!」
深い夢の淵をさ迷っていた白鬼は、休めていたはずのベッドから勢いよく体を起こした。
荒い浅い息を何度も繰り返し、何とか気持ちを落ち着ける。
炎を映し取った瞳は、何か恐ろしいものでも見た後のように大きく見開かれ、ただ一点を凝視したまま動かない。
上半身裸のままで、外気にさらされている白い肌の上は、吹き出した汗に濡れている。
それを手で拭い、落ちてくる銀糸をかき上げると、白鬼は再びベッドへと身を横たえた。
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