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肺の中の空気すべてがなくなるかと思えるほど大きく息を吐き、白く長い腕を天井へと差し出す。何かを思うように強く拳を作り、握りつける。
それから静かに力を抜き、そのため、腕を力なく体の脇に落ちた。
ゆらりとした気のない動きで、力が入っているかさえよく分からない腕で体を支え、ゆっくりと起き上がると、そのまま長い足をベッドからおろす。
立ち上がり、簡素な六畳間の部屋の中を見回すが、あるのはベッドとクローゼット。
他には、古ぼけた木の机ぐらいしかない。
大幅に場所を取るのは、固い質素なベッドだ。体重をかければぎしぎしと軋む。
窓際には、申し訳程度に取り付けられた窓があるが、そこから光が差し込むことはない。隣にそびえ立つ、大きなビルのせいだ。
かと言って、彼がそれで何か不自由するわけでもないのだか。ふらふらと揺れる電灯ひとつがあれば、特に困ることはない。
休息だけを取ることが出来れば、それでいいのだ。
ここは、彼にとっては体を休めるためだけの場所にしか過ぎないのだから。
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