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「また甘いもの食べて、太るのはいいけどにきびには気をつけなさいよ。」ルーシーは壁にコートをかけるとマスターに一言、「ホットミルク、砂糖抜きでね」と告げて店の奥――化粧室へと潜っていった。
「ホットミルク?」
せっかく珈琲が美味しいと評判の喫茶店にきているのに、ホットミルク?しかも砂糖抜き?
「ルーシーは珈琲が飲めないんだよ。」マスターがにこやかに、言う。まるまる笑顔。
銅色の小さな鍋に、牛乳をそそぐ。火にかける。
とても愛しく、鍋をゆるやかに回す様。
「意外だねえ。」
私はまた、バナナ味を口に放る。はあ、しあわせ。
スイーツはいつだって女の子の味方。
辛かった思い出とか、楽しかったこと、甘酸っぱい過去、ぜんぶに何かしらのスイーツがくっついてるはず。
じうじう。
鍋が鳴く。
茶色のマグカップに、暖まったミルクを注ぐとなんとなくお母さんのかおりがした。
「いいにおい。」
私はまんまるの笑顔でマスターを見る。
なんだかほっとする一日。
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