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錦糸町の駅を抜けて、楽天地を離れると急にべつの世界のドアが開く。
あの喧騒が嘘みたいになくなって、人々はカップルからサラリーマンだらけに変わる。灰色と紺色の景色。空は限りなく、狭い。
そんなオフィス通りを抜けたところに、喫茶店カムパネルラはある。
紫色や鉛色、それに染まり嫌になってしまったひとのための優しい場所。
コンクリートジャングルに咲くラフレシアみたいなもの、と私は思ってたりする。
カムパネルラの内装はいたってシンプルで、真っ白な壁。そこに子供の落書きのようなチューリップの絵が一枚、そしてアナログな時計が一個かけられているだけだ。テーブルはなく、マスターを囲んだカウンターのみ。
狭いわけではないのだけど、空間が気持ちいいというか。なんかそんな感じ。
真っ白な空間。
今日のBGMはビートルズ/レディ・マドンナ。
ポールのちょっとしゃがれた声が店内の珈琲という珈琲に魔法をかけている。
ここは喫茶店カムパネルラ。
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