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「ほら衣野!イケメン!入って来ーい!」
物凄く入り難いが、呼ばれてしまったのでもう仕方ない。
俺は半ばヤケクソに松葉杖を前へ動かし、前説のせいで必要以上にざわついた教室内に入って教壇横に立った。
当然ながら、クラス全員の視線が鋭く突き刺さる。
よし、笑顔だ笑顔。
「衣野 慎吾です。まだ脚がこんな状態なんで迷惑掛ける事もあるかもしれないですけど、今日から色々とよろしくお願いします」
と、こんな風に明るく爽やかな笑顔で誠実な挨拶をしながら軽く頭を下げれば、取り敢えず第一印象は悪くないはずだし、舐められたりもしないはず。
ただでさえこの怪我だし、同情されないぐらい明るく振る舞わないと。
「衣野が分からない事は優しく教えてやってくれよ!じゃあ衣野の席はそこだから座ってくれー」
中須先生が指した席は、予め聞いていた窓側の一番前の席。
「はい」
俺は貼り付けたような笑顔を維持したまま席へ移動し、右脚を庇いながら着席して窓辺に松葉杖を立て掛ける。
背中に視線をビシビシ感じる。
「マジでイケメンじゃん!」
「マジ王子だよ王子!」
「やだー!今日から来るって分かってたらまつエクしたのにー!やだもー!」
そんな話し声が教室内の至る場所から窓際の俺の耳に届いた。
わざと聞こえる様に言っているのかと。
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