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「でもタメだったんですねー!雰囲気とか大人っぽいから先輩かなって思ってた!」
と笑顔をキープしたまま明るく話し掛け続けるも、それに反して彼女は視線を下へずらして長い睫毛を伏せてしまった。
「……そうですか。じゃあ」
そして俺の横を素早く擦り抜け、足早に階段の方へ歩いて行ってしまう。
俺は松葉杖ごと身体の向きを変え、彼女の後ろ姿を呆然と眺める。
これって、逃げられた?
「え、何!? 知り合いかよ!? 」
「衣野!どーゆー事だよ!? 」
棒立ち状態の俺の肩を安井が強く揺さ振り、葛西が興奮を顕にして俺を問い質す。
「え、あ、いや……朝あの子に職員室の場所教えて貰っただけだけどさ……」
「はあー?……あ!さてはお前、薪森さんと話す為の口実だったんだろっ!」
「え?いや違うって。あの子しか周りにいなかったんだって」
見つめた事を誤魔化す為の口実にはしたけど。
ていうか、やっぱり盗み見した変態だと思われてるのかな……。
「薪森は誰が話し掛けて来てもあんな感じだから気にすんな」
突然、小木原が俺の耳元でボソッと呟いた。
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