慕情

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    「あ、小木原。おはよ!」 「おはよ」 学校の玄関で左足をスニーカーから上靴に履き替えていると、小木原が横にすっと現れたので朝の挨拶を交わした。 ポーカーフェイスのまま下駄箱から上靴を取り出す小木原は、相変わらず今日もクールガイ。 「小木原って独りで学校来てんの?」 「常に」 「同じ中学だった奴とかは?いないの?」 「6人いるけど徒歩で来れる距離だし、独りのが気楽だから」 「え、俺も徒歩圏!小木原って何中?」 「並木(なみき)中」 「マジで!? 近いじゃん!俺、明智(あけち)中!」 「明智?近いな」 並木中は俺が住む明智町の隣、並木町に在る中学校だ。 しかも元並木中男子バスケ部のメンバーの(ほとん)どは顔見知りの仲。 「並木中と何回か試合したけど、小木原はバスケ部にいなかったよな?」 「ああ……お前いかにもバスケ部って感じだよな」 「小木原は?何か部活やってた?」 「……剣道」 「おお!言われてみると確かに剣道部っぽいな!何か和風な感じするし!」 「和風な感じって何だよ」 俺と小木原はテンションのズレはあるが、どうにか世間話を成立させながらエレベーターに向かった。
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