慕情

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  この日の3、4時限目は体育の授業。 脚を骨折中の俺以外の男子達は教室で指定ジャージに着替え、体育館へ移動する為にいつもの4人でエレベーターに向かった。 ボタンを押してエレベーターが上がって来るのを待っていると、横に在る階段を下から誰かが昇って来た。 よりによってその人は薪森さんで、葛西と安井は「おっ」という顔を見合わせてニヤける。 俺も条件反射的に彼女の顔に見入ってしまうと、伏し目で階段を昇って来る彼女がふと目線を上げた。 そして俺と目が合った。 何故かドキッとしつつ彼女に軽く会釈して見せるけど、彼女は直ぐに睫毛を伏せて俺から目を逸らす。 そして階段を昇り切った彼女は俺達の背後を通り、教室の方へと颯爽と歩いて行ってしまった。 俺、薪森さんにシカトされた。 「来たぞ」 エレベーターが到着した事を小木原が低音ボイスで俺達に伝え、素早くエレベーターに乗り込む。 「小木原って全然薪森に興味無いんだな」 「人間そのものに興味無いんじゃね?」 葛西と安井が耳打ちし合っているのが聞こえ、高校に来てまだ2日目の俺は「そうなのか」と心の中で思った。
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