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放課後、今日は寄り道もせず独りで帰宅する俺は4階からエレベーターに乗り込んだ。
間もなくエレベーターが1階に到着して扉が開き、足元に気を付けて松葉杖を突きながらエレベーターを降りる。
「俺と付き合ってくんない?」
エレベーターから廊下へ出た時、交際の申し込みらしき台詞が何処からか聞こえた。
少し驚いて周囲を確認すると、エレベーター機の横に在る階段の陰に男女生徒2人が向かい合う姿。
ライオンの鬣そっくりの派手にセットされた髪型の男子生徒、そして薪森さんだ。
「俺と付き合ってくんない?」って聞こえたから、薪森さんは交際を申し込まれている所なんだろう。
「……ん?……何だよ、お前」
立ち止まって凝視する俺の存在に気付いた男子生徒に睨み付けられ、やっと我に返った。
「あ……いや」
「お前、1年の……」
俺を知っているかのような反応を見せたライオン男が「1年の」と言ったので、多分2年生か3年生の先輩なんだろう。
少し困惑しながら薪森さんに視線を移すと、真顔で俺を見つめていた彼女と目がばっちり合てまたドキッとした。
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