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「何ガン見してんだよ」
ライオン男に威嚇されてまた我に返らされ、不本意とはいえ告白シーンを邪魔してしまっている現実に引き戻された。
「え……いや、たった今エレベーター降りただけなんですけど」
「ならさっさと消えろや。なに立ち止まってガン見してんだよ」
「……すいません」
年上に逆らうと後々面倒な事になるのを知っている為、ここは下手に出るという選択肢しかない。
松葉杖を前へ突きつつ今一度ちらっと薪森さんの顔を見ると、彼女は怪訝な眼差しでライオン男を見上げている。
薪森さんの意外な表情を見た。
「衣野だよな、お前」
消えるよう命令した癖にライオン男はまた俺に声を掛けて来て、結局俺はあんまり移動していない。
「3年の間でも有名だぞ、事故った美少年君」
よりによって3年生か。
2歳も上だと、生意気な言動で応戦したら面倒臭い事態を招くかもしれない。
けど。
「故意に車で撥ね飛ばされたとかじゃねーの?お前に女盗られた奴の復讐でよ」
嫌味に笑うライオン男の皮肉は、俺の怒りのスイッチに触れている。
こいつ最悪。
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