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体の底から怒りが込み上げる中、ライオン男は更に最悪な暴言を俺に放った。
「あんま調子乗ってっとまた痛い目遭うぞ?殺されないように気ぃ付けて生きろよな」
また痛い目に遭う?
殺されないように?
どんな事故だったのかも、俺がどんな想いを背負わせられてるのかも知らない癖に。
何も知らない奴に何でそんな事を言われなきゃいけないんだよ。
「最低ですね」
怒りで手を出しそうになった時、綺麗ながらも冷酷な声が俺を止めた。
「怪我人を労ってあげるどころか酷い事ばかり言って。大嫌いです、貴方みたいな人」
忌々しそうな眼差しでライオン男を見据える彼女が、吐き捨てる様に言った。
そして踵を返して長い髪を靡かせ、玄関へ向かって足早に去って行く。
ライオン男と一緒に取り残された俺は、彼女の凛とした背中が見えなくなるまで呆然と眺め続けた。
胸の底から熱い何かが次第に込み上げてくる、心臓の鼓動が徐々に強くなっていく。
無表情なフランス人形が、怒りの表情を出した。
怒った。
多分、俺の為に。
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