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常に無表情だった彼女が嫌悪感を顕にして、あいつを睨んで「大嫌い」って言った。
俺の事を考えてくれてなのか、ただあいつの人間性が嫌いだからなのかは解らない。
どちらだろうと構わなくて、俺の代わりに彼女がああ言ってくれた事が心底嬉しかった。
『怪我人を労ってあげるどころか酷い事ばかり言って。大嫌いです、貴方みたいな人』
「衣野」
夢うつつ状態から現実に帰還した。
右手の頬杖を解いて顔を上げると、俺の座席の右横に立つ小木原が俺を見下ろしている。
「何ボーッとしてんだよ。視聴覚室に移動しねぇと」
「え、そうなん?ごめんごめん!」
あれは既にもう昨日の出来事なのに、まるでついさっきの出来事かのように余韻に浸ってしまっていた。
そこまで嬉しかったのか、俺は……。
俺の英語の教科書と筆記用具を小木原が代わりに持ってくれて、椅子を立って松葉杖に両脇を据えた。
小木原は怪我人の俺をいつも労って優しくしてくれる。
視聴覚室へ移動する為に小木原と教室を出ると、とあるものが視界に入って最高潮にドキッとした。
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