39266人が本棚に入れています
本棚に追加
/698ページ
5月17日、この日は学校帰りにそのまま西病院に寄って右脚のギプスを外して貰った。
硬いギプスを電動カッターで切断すると顕になったのは、筋力が衰えた細い脚、そして脛の12㎝に渡る手術痕。
窮屈なギプスから解放された清々しさ、あの事故を思い出させる傷の忌々しさ、そして今後への不安感が合わさった複雑な感情が湧き上がる。
「あんな事故に遭って大怪我負わされて、よく前向きに頑張ったね」
そう言って微笑む中年医師は、搬送されて来た俺を処置してくれた恩人。
あの日から今日までの約2ヶ月間、ずっと世話になって来た。
「まだ15なのに偉かったね。慎吾君には私も勇気付けられたよ」
「あ、でも今日で俺16になったんですよ、先生ー」
「え?あ、本当だ。おお、おめでとう」
カルテで俺の生年月日を確認した先生は目を細めて笑った。
「何とかギリギリ間に合ったね。松葉杖はまだ取れないけど。この後は彼女に祝って貰うのかい?」
「彼女なんかいないですよ。家族で外食する程度」
「あら、そうなのかい?でも美男美女一家だし華やかでいいじゃないか。私も混ざりたいよ」
母親は口煩いババアだし、父親と妹は鬼の申し子ですけど、それでも混ざりたいと仰るか?
最初のコメントを投稿しよう!