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薄ピンク色の粉雪みたいに桜の花弁がぱらぱらと散り続ける、その中に居る彼女がふっと視線をこちら側へ向けた。
正に俺が立っている、この渡り廊下の窓に。
距離は遠くとも俺の視線を感じ取ったのか、ばっちり目が合った瞬間にドキッとしてしまう。
ヤバいな、この状況だと俺は盗み見していた変態だと思われそうだ。
このまま何も無かったかのように立ち去るのは後味が悪いし、何か声掛けてからの方が……。
あ、そうだ!
咄嗟に名案が浮かび、俺は渡り廊下の窓をガラッと開けた。
「あの、ちょっと訊きたいんですけどー!職員室って何処ですかー!? 」
爽やかな笑顔を作って彼女に尋ねれば、職員室の場所も分かって一石二鳥。
我ながら冴えてるななんて思っていると、俺を見る彼女の目が丸くなる。
「……転校して来たんですか?」
そう俺に質問し返した彼女の声は、綺麗なソプラノボイス。
「あ、いえ!僕一昨日まで入院してて今日初めて学校来たんで!」
職員室の場所を知らない理由を笑顔のまま大声で伝えると、彼女は俺を見る目の表情を更に少し変えた。
どうやら、窓の内側から覗いている俺の両脇の松葉杖の上部が窓の桟ギリギリで見えたらしい。
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