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すると彼女は右手をすっと上げ、渡り廊下の向こう側の校舎方面を指差した。
「そこを出ると突き当たりにエレベーターがあるので2階で降りて下さい。直ぐ職員室が見えます」
無表情に加えて淡々とした口調ながら解り易く教えてくれる。
「ありがとうございます!」
俺は軽く頭を下げながら礼を告げて窓を閉め、教えて貰った方向へと松葉杖を突く。
が、無性に気になってもう一度だけ窓の外へ顔を向けて見ると、彼女は桜の木の下の芝生に座り込んで幹に寄り掛かっていた。
残り僅かな桜の花弁が風で舞い散って、彼女の頭上に降り注いでいる。
凄く幻想的な光景で、彼女が一層美しく見えた。
何だか儚げで、このまま透明になって消えていってしまいそうな。
まるで幻影みたいな、不思議なオーラや空気感を持った女子高生だ。
こんな朝早く学校の桜の木の下に座って何してるんだろう。
大人っぽいから2年生か3年生の先輩かな。
そんな事を考えながら彼女に教えて貰った通り、渡り廊下を出た先の校舎の突き当たりに設置されていたエレベーターへ乗り込んだ。
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