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キアル卿の屋敷に着いたディムは、だだっ広い庭園を抜け大きな玄関の扉をノックしていた。
「すみません!誰かいませんかね!?」
大声を出しながらノックをし続けていると、やがて玄関の扉がゆっくりと開いた。
「何の用でしょうか…?」
中から出て来たのは陰気な顔をした若いメイドである。
髪もろくに手入れされていない肩までしかないざんばら髪で、この豪勢な屋敷には不釣り合いのように思われた。
「いやあ、実は私各地の美術品を見て回っている旅人でして、是非キアル卿の描かれた絵画をご覧になりたいと」
ディムは手をこねこねと怪しく動かしながら、口から出任せにバンバン嘘をついていった。
ミュウは普段の様子からは考えられないその滑舌の良さに、狐につままれたかのように驚いている。
「そういうことなら、キアル卿に掛け合ってみます…。ですが、くれぐれもお静かにしていて下さいね…」
メイドは虚ろな瞳をディムに向けながら注意をした。
「キアル卿がご立腹されますから」
最後にメイドがそう言い残すと、扉は重く響きながら再び閉ざされる。
「なんだか、嫌な感じがします…」
ミュウは心細そうにしながら、ディムの腕をギュッと掴んだ。
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