13106人が本棚に入れています
本棚に追加
「――まあ、これで大丈夫だろ」
ディムは町中を歩きながらミュウを見て言った。
髪を切ってショートカットになったミュウからは、前より活発な印象を受ける。
キアル卿の屋敷へと向かっている途中のことであった。
「でも、せっかくディムさんが編んでくれたのに…」
しかしミュウは落ち込んだ様子で愚痴り続けていた。
ディムはその態度にイライラしつつ、適当に口を開く。
「あー、いちいちうるさいな。そっちの方がお前に似合ってるよ」
ただ単にミュウをなだめるために言っただけだったのだが、それを聞いたミュウは急に笑顔になってディムの顔を見た。
「本当ですか!?なら良かったです…」
ミュウが心底嬉しそうに言うものだから、ついついつられてディムの口元も緩んでしまう。
「あ、ディムさん笑ってる。珍しいですね」
ミュウに指摘されディムはハッと我に帰った。
頬を引っ張り無理矢理表情を崩すが、それを見てミュウはクスクスと笑う。
「どうして笑ってるのを隠すんですか?」
「わ、笑ってなんかねえ!勝手なこと言うんじゃねえっ」
ディムはミュウの頭をぽかっと軽く叩くと、足早に進みミュウから表情を窺われないようにした。
「な、なんで怒るんですかっ!」
ミュウは訳が分からず、ただ頭をさすっているだけだった。
最初のコメントを投稿しよう!