死の奇跡~第5章~死

3/3
前へ
/105ページ
次へ
次の日彼女の通夜に出た。 久しぶりに彼女の顔を見た。 いつも笑顔でいた山辺さんの顔が冷たかった。 その白い顔は眠っているようにきれいだった。 今にも起きて 「先輩」 と、笑ってくれそうな気がした。 だけど、もう動くことはない。 俺はずっと側にいたいと思った。 涙が流れた。 「水波、向こうに座ろう」 友人がうながす。 動きたくなかった。 「はやく」 俺は動いた。 通夜の間、なにも考えられなかった。 「水波、帰ろう」 誘われたが、 「いや…先に帰ってて」 と言った。 ケータイを見た。 なぜか彼女からメールがくる気がした。 また、声が聞きたい。 また、笑っている顔を見たい。 ――無理なのはわかってる。 でも… ………わかった。 こんなに山辺さんに会いたい理由。 好きだったんだ。 願いを聞いてあげれなかった悔いだけじゃない。 好きだったんだ。 なんで気がつかなかったんだろう。 こんなにも好きだったことに。 もう遅い。 だって、彼女はもういない。 そんな… 気がつくのが遅かっただなんて。 こんなのってない。 涙が出てくる。 好きなのに… 山辺さん… 「樹奈っ!」 メールが来た。 ――樹奈? 『うしろを見て下さい』 、
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加