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『うしろを見て下さい』
うしろ?
ってか、山辺さんからメール??
うしろを振り返った。
そこには笑顔の山辺樹奈がいた。
「先輩」
いつもの優しい声で呼んだ。
――少し消えそうな響だ。
俺は声が出なかった。
彼女は声を続ける。
「先輩…会いたかったです」
涙を浮かべながら言った。
「…傷は?」
違う、言いたいのはこんなことじゃない。
「傷は今はないです」
「そっか…よかった」
なにも言えない。
あぁ…話したい事がたくさんあるのに。
「どーして…」
これしか出てこない。
「私…ずっと会いたいって思ってました。
そしたら、会えたんです」
目を潤まして言った。
「…俺も」
「…!
……え?」
「俺、わかったんだ。
山辺さん…樹奈のことが好きだったんだって。
失ってから気付くだなんて…でも、よかった。
だって、失ってないから」
「……失ってない…?」
「だって、ここにいるだろ?」
樹奈は寂しそうに笑った。
俺は急にドキドキして樹奈に手を伸ばした。
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