田宮

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今度は、当の男子のほうに心の耳を傾けてみることにした。 (さんさんさん太陽のー光ー……) (……歌ってる、バカだこいつ) 田宮は底抜けに明るくて、おまけにどこか抜けているような男子だった。 テストはいつも赤点ギリギリである理由はこれかと、桜子は納得してしまった。 (……あれ、山崎!) (なにかに気づいた……かな) 周りがシャーペンをノートに叩きつける音が聞こえなくなるほどに意識をそらすことなく集中させつづける。 (具合悪そー……顔まっか。 声かけよっかなーまた無視されるかなーそうそう今朝はおはよって言ったら顔そらされて) 急に、田宮の思考がぐちゃぐちゃしてきて、言葉がだらだらと乱れてくる。 映像は、常に山崎の横顔や俯いた顔。 (嫌われてんのかなー俺) その瞬間、今までとは違ったビジョンが頭の中に浮かび上がってきた。 頬を少し赤らめて、小さな花のように可憐に笑う。 (あれ、山崎さん……これ山崎さん?!) 桜子はこんな表情の山崎を見たことがなかった、というより真っ正面から顔を突き合わせることがなかった。
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