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桜子には、その一枚が田宮の作り出したものなのか実際に目にしたものなのかわかるほどの能力はなかった。
だが、田宮の暖かい雰囲気のその一枚には直感的に感じることがあった。
(……田宮も山崎さん好きなんじゃない?)
そう思うや否や、桜子は右手を天井に突き刺すほどに高くまっすぐ挙げていた。
「先生!」
(星崎)(桜子だ)(桜)(桜ちゃん)(起きてたんだ)(下痢かな?)
クラス中の意識が自分に突き刺さる。
「どうした星崎」
(こいつ授業聞いてなかったから質問してきたら嫌みの一つでも)
「山崎さんが具合悪そうなんで私保健室に連れて行きたいんですが!」
(えぇ! 私別にそんな……!)
数学教師は山崎の方向を一度見てから再び桜子に視線を戻す。
(確かに……いやでもこいつは授業をさぼる気だな)
「じゃあ星崎おまけはいい。 隣の席の田宮、行ってこい」
「は……はい!」
(ラッキー!!)
(た、田宮くんが来てくれるなら……!)
恋の力は、恐ろしいものだと桜子は思った。
普段から真面目な山崎が、自分からけしかけたとはいえ授業より田宮を選んだのだ。
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