ガタラシンとボトローコトリ

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…むッかしむッかしの事だァ、 ガタラシンとボトローコトリという兄弟がおッたンだ。 ふたりは山々を束ねるタツノキソカザの八十八と八十九ツの息子でな、 ちっさな兄のボトローコトリはそのまンま、下流の小山の主になッた。 でっかイ弟の、 ガタラシンは上流の、でっかイでっかイ岩山のあるじになッたんだ。 ガタラシンはそりゃア豪気な性格で、 こんな立派な岩山の、主になったオレは、なんて立派な存在なんだろうと鼻ァ高くした。 やがて、百年がたッた。 ガタラシンの岩山は、アンマリにもカタくて、わずかなコケどもくらいしか、よりあつまりはしなかッたんだ。 流石にさびシくなったガタラシンはァ、 ショウガネェ、あのちっこい兄貴と酒でも汲んでやるかッて、 兄貴の小山までズゥン、ズゥンと出かけていッたんだァ。 ところがだあ、 兄貴の小山はアオアオとした森がしげリ、 ボトローコトリは、森のケモノたちと、楽しそうにたわむれとるじゃァないか。 こりゃァどうゆうコトだァ、あいつがおれのヤマのケモノたちを盗っちまッてたのかァと、 ガタラシンは怒ッた。 酒をこぼし、 オノれの岩山に帰ったガタラシンは、怒りに身を震わせた、 するッと、岩山はみるみるうちに膨れァがり、 全部あいつが盗っちまったんだァ、という ガタラシンのおたけびといっしょに、がらん、と崩れた岩山が、 みるみる川のナガレをせきトめちまッたんだ。 んだもンだから、下流の小山はみるみる森が枯れ、ボトローコトリの山からは、アッというまに生き物がいなくなっちまッた。 それでも、 ボトローコトリはなァんも言わァんかった。 ただただ、悲しそうに、枯れた川を眺めてたんだなァ。 嬉しいのは、ガタラシンさ。 ヤァ、ざまァみろ、ヤァ、ざまァない、と酒を飲んで酔っ払った。 その頃から、ガタラシンの岩山にァわずかなコケすら生えなくなっていた。 ガタラシン、 おまエの、意地やうらみねたみが、 その岩を殺してィることに、 気付いていなかったんだァ。
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