3/10
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
まずは洋服屋へ行き、時計屋を見て、客がややすいた時間にお昼を食べに行き、食後は本屋でゆったりと楽しそうな本を探し、アクセサリーショップを見て最後に鞄屋を見る。 男の為に楽しみは最後に取っておいた今日の女のスケジュールもとい、それに異議のない男のスケジュール。 男は優柔不断な性格故、時間を無駄にしがち。店を選んで更に時間まできっちりしていて都合も良い。 男にはこれが最良であって納得のスケジュールなのだ。 洋服を自分に当て女が言う 『このお洋服、どうかしら』 「そうだなぁ、キミにはもう少しクセがあってちょっと特殊で、それでいてキミじゃないと似合わないような、そんな服がいいなぁ」 『むつかしい洋服ね。でもあなたの見る目はいつも確かだわ。あなたに洋服を選んで貰おうかしら』 女は男の見る目に惚れ込んでいた。 女を良く見ている為か、いつも男が選ぶ服は女に似合っていて、それが女には最良であって納得のセンスなのだ。 男が洋服を悩んで選ぶと女はとても嬉しそうな顔になった。 男が買うと言い出したが、断固として女は自分で買った。男に買わせるのはあまり好ましくなく、良心的ではないと思っているからだ。 女はお金のかからない性格で、男にとってはありがたいやら申し訳ないやら。 時計屋に入り、高い時計を買うわけもなく見物してああだこうだ言って出ていき、すいたレストランでゆったりと昼飯を済ませ、本屋ではタイトルを見て手に取り、中身を見てああだこうだ。 楽しい時間は早く過ぎるもので、アクセサリーショップへと足を運ぶ時間になった。 ダイヤが光る指輪を見て女は 『私、こんな素敵な指輪をもらったら嬉しくてきっと倒れてしまうわ』 男は笑いながら言う 「じゃあキミにはあげれないよ。だって倒れられたら困るもの」 女のささやかなアピールは男の笑いによってかき消された。 付き合い始めてから既に5年もの歳月が経ち、仲も全く悪くなく、男の収入も二人では少し余るくらいに生活力があったし、女も働いていたし、なにより二人ともそろそろ良い大人だったため、女は最近結婚願望がうまれてきたわけで。 度々アピールはするものの、男の鈍感さによって全ては台無し。 女もいい加減諦め半分。 『あなたって本当に鈍感なのね…』 溜め息を交えて言った。 「急にどうしたんだい?僕が何か悪い事でも…?」 呆れる言葉だ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!