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男が問いかける 「主人、ここはなんで幸という名前の店なのだ?」 『お客様が皆幸せな気分になる為に私が鞄を作っているからでございます』 「客はみな満足して受けとるのか?」 『その通りでございます。今までのお客様は皆最後は幸せな顔をして帰って行きます』 「なるほど、面白い。どれほどの腕なのか試したい。予約をしよう」 『ありがとうございます。では、どういった鞄がお望みなんでしょうか?』 主人が問いかける すると男 「そうだな、僕は色や形などで毎日鞄を変えているのだが、今までは毎日変えてしまってもいいような鞄ばかり買ってきた。むしろそういう鞄しか出回っていない。僕が望む鞄は飽きない鞄だ」 『はぁ、飽きない鞄、ですか』 「そうだ、カラフルなものがいい。色で迷う事が無いようにしてほしい」 『かしこまりました。ですが、そのようなむつかしい鞄になるとお値段の方が…』 「金ならある。心配するな高くても何百万とする訳ではないだろう?」 『はい、かなり手の込んだ品は普通の店では何百万とするでしょうが、当店のオーダーメイドは他店より安いのも魅力のうちとなっていますので、それほどまでは』 「そうか、それは関心」とは言うものの、男は鞄にしか興味がなかった為、他にお金をあまりかけなかった。 それに独り暮らしにしては収入は良すぎる位だったので何百万などはまだポンと出せるような貯金があった。 『では、一週間程で出来上がるのでその位にまたお越しください』 「なかなか早いな」 『早さも当店の魅力のうちとなっていますので』 「なるほど、それは関心」 『良かったわね、世界に1つだけの鞄なんて素敵じゃないの』 「あぁ、確かにそうだ。とても楽しみになってきたよ」 「それじゃあ主人、よろしく頼むよ」 『ありがとうございます。満足して頂ける鞄を作れるよう努力する次第でございます』 嬉しそうに男と女は店を出た。 『あなたいやに嬉しそうよ。』 「ああ、最近僕には足りないものがある気がしていたんだがね、それはやはり鞄だったんだ。新しい鞄が足りなかったんだ」 「今日はありがとう。愛しているよ」 『えぇ、私も愛しているわ』 「じゃあ、また」 女を送ると男は軽い足取りで帰宅した。 それから楽しみで仕方がなく、一日一日とてつもないスピードで過ぎていく。 そしてとうとう一週間が経った。
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