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ついに完成の時だ。
男は息を飲んで”幸”のドアを開ける。
「やあ主人、約束の一週間が経った。鞄を見せてくれ。僕はこの時をどれほど待ち望んだ事か」
『いらっしゃいませ、お客様、鞄の方はこのとおりにございます』
「おお」
店主が手を差し向けると、そこには今まで見たことのないような鞄が置いてあった。
「これはすごいぞ主人、今までにごまんと鞄を見てきたがこんな鞄は初めて見た。これはどうなっているのだ?」
『はい、商品説明を致します。まずは外側の説明ですが、見てお分かりの通り、半分で違う色のカンガルー、ワニなどどれも最高級品の染革が縫われていて、どちらを見せて歩くかにより気分の変化を楽しませる事でしょう』
「半分で色が違うとは考えたな。この赤と青、良い色だ」
男はその鞄に興奮した
『ありがとうございます、ただそれだけではございません。この鞄はリバーシブルになっておりまして、内側をひっくり返すと、黄色と緑でも使用可能となっております。尚、ポケットなどは裏も表も差し支えのないように趣向を凝らして配置してあるため、不便さもないでしょう』
「なるほど、便利かつ遊び心がついていて関心関心」
男は更に気が高まってきた。
『この革は二枚重ねて縫ってあるので、裏地も色が違くなっています。上のチャックを開けて中から返せば、裏地を表にして使えます故、更に裏地の外側白、黒に加えてその内側の紫、ピンクと全8種類の色を見せて歩く事が出来ます。持ち手はフックにて取り外し可能となっていて、返すときに外し、また付ければもと通りにございます。更に、肩掛け専用のものもついているので、取り替えることにより肩から掛ける事も出来ます』
「それはすごい!やはり鞄は見た目も重要だが利便性も兼ねてなくては!ここまで精巧に作ってあるとは思いもしなかった!納得だ。お金を払おう。いくらになるのかね?」
『そうですね、この様な品物になりますと〇〇万円となります』
その値段は男の予想を遥かに下回る数字だった。
「ふむ、ここまでやってその値段とはすばらしい、主人、ここはもて流行されるぞ」
『そうですか、それはありがたい事で』
男は金を払い、鞄を大事そうに持って店を出る。
それから二周間、男はその鞄を持ち続けた。持ち続けれる程に飽きない鞄だった。
しかし使い続ける中で、ある大きな欠点に気付いた。
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