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物の良さに麻痺しがちになっていたが、ここのところ気が付き始めた事。
肩がこる。
そう、表だけならまだしも、裏地にまで最高級品の革がくまなく使用されていて、更にポケット、仕切り等も全ての場所に配置してある為、普通の鞄に比べ結構がつくほど重い。
そこに荷物を入れて持てば物入れとしては最適と呼べる物ではなかった。
それに気付き、急遽男は”幸”へと向かった。
「おい主人、この鞄は利便性もあり外見もいい。だが肝心な事に持つにしては重すぎる。こんな鞄を毎日持っていたんじゃ体がもたん。どうにかしてくれないか」
男は眉を寄せ、やや怒り気味にそう言い放つと
『それはそれは申し訳ありません。しかし私が受けた注文はカラフルな飽きない鞄。と言うだけであって軽くしろとは…』
「そうか、僕が悪かったのかもしれないな。ではカラフルで飽きなくて軽くて小柄な鞄を作ってくれ」
今度は眉を下げて溜め息交りに言った。
すると主人
『そういう事であればまたお金がかかってしまうのですが…』
「分かっている。良い鞄を手に入れる為だ。金なら気にするな。ではまた一週間後、期待しているよ」
『ありがとうございます。お客様に満足して頂けるよう努力致します』
男はまた期待をしながら店を出た。
そして一週間後
男が”幸”のドアを開ける。
「主人、鞄の方はどうだね」
『いらっしゃいませ、もちろん出来上がっております。今回は重い革を使わず、手染めされた最高級品の布を使って仕上げました。』
「なるほど、布ならば軽いな」
『見た目は前回の物より一回り、いや、二回り程小さくなっておりまして、それでいてギミック、形等は前回と同じ物になっています故、形等は御心配なく。尚、今回の物は最低限の縫い目、最低限の布、最低限の利便性にしてある以上、ポケット、仕切り等は従来の物と多少違いがありますが、普段使う上で必要な内容となっております』
「なるほど!それはいい!軽くて持ち運びに特化したうえ、形、利便性も備えているなんて!」
男の声のトーンが上がった
「では、その鞄はいくらかね?」
『今回は最高級品の入手ルートも特別なもので、値段も最低限となっておりまして、〇万円となります』
「それだけやってその値段なのか!喜んで出そう!…そうだ、チップもだそう」
『ありがとうございます』
値段に加えて上乗せ金を払い男は店を出た。
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