13人が本棚に入れています
本棚に追加
琴美はゼエゼエと荒い息づかいで家へ帰ってきた。
ちんまりとした普通の家だ…
ある一点を除いては…
玄関の前に2人のスローブを着た大男が立っている。
あきらかに,可笑しい。
2人組の男達は,
琴美の方へチラリと目をやり,
すぐに目線を正面へ戻した。
庭の色とりどりの植物や花たちは
母親の手入れが行き届いていて
とても生き生きとしている。
琴美は気にせず,
ワゴンを庭のコンクリートの部分に置き,
積み上げた教科書を両手いっぱいに無理やり持って家へ入った。
台所では母親の【マクラーレン・コリス】がシチューを作っていた。
「あら,お帰りなさい琴ちゃん。荷物重くって大変だったでしょう?
トムちゃ~ん!!」
ヴォン!
次の瞬間,琴美の後ろに長身のすらっとした男の子が現れた。お世話抜きで男前だ。
「やっと帰って来たな。荷物持つからかして。」
ニコッと琴美に笑いかけたその美少年は琴美の兄【トムス】だ。
トムスは琴美の教科書を軽々と持ち,また瞬時に消えてしまった。
そしてすぐに再び現れた。
「琴美の机に置いておいたからな。
言ってくれたらオレもついて行ったのに。
琴美は魔法が使えないんだから,無理するなよ。な?」
「…ありがとう。でも,私出来るだけ自分で何とかしたいの。」
トムスはふっと笑い,琴美の頭を優しく撫でた。
「…偉いな。」
トムスはとても琴美を大切にしているようだ。
「さぁ,ご飯が出来たわ。食べましょ。
太郎ちゃ~ん!」
琴美の弟,【太郎】も瞬時に現れた。
まだかなり小さい子供だ。
「…わ~い!
おいそうでしゅ~」
無邪気に笑う太郎をコリスが持ち上げ,イスに座らせてあげた。
「さぁ,揃ったわね。食べましょうか」
4人が席に着き,コリスは子供たちににっこり微笑んだ。
とても幸せな時間が流れていた。
最初のコメントを投稿しよう!