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その日,担当の教師は予定より1時間遅れてやってきた。
顔は真っ青。
もともと内気で,生徒達ともあまり交流を持たないタイプだが,
その日は違った。
その男教師は遅れて教室に入ってくるなり,
早足で琴美の座っている机の前まできた。
机の両端に手を置いて,言った。
今宵…
キミの美しくも恐ろしい
力を持った宝石を 頂きに参上する。 ~怪盗バンパイア~
…この手紙が,朝早くに学校宛てに届いたそうだ。
琴美君…
キミ宛てにだ。
〔琴美は衝撃を受け,顔がこわばった。
双子もお互いの顔を見合わせる。〕
至急,パドリック校長の所へ行ってきなさい。」
教師は少し考えるポーズを取ってから続いて,
「花梨君と雅也君。キミ達も着いて行きなさい。
どーせそのつもりだったんだろうけどね…」
「よっしゃ!!分かってんじゃんか。」
すぐ近くで聞いていた雅也が教師の前でピースしてみせた。
「大変だわ,
琴美が狙われてるなんてっ
なんなの?
怪盗バンパイア………って。」
2人と少し離れた席にいる花梨が言った。
「それに,美しくも恐ろしい力ってのも気になるな。
テレポ能力の事か?」
「その可能性は高いわ。
何よりも,なんて物騒な…………。
ねぇ先生,
校長先生は,
琴美をどうするつもりなの?」
「……そ,それは,
直接聞けばいいじゃないか。」
このとき,担任の様子が少しいつもと違うなと,
教室の生徒全員が思っただろうというほど,
担任はよそよそしかった。
「まぁ,いいわ。
行きましょう。
琴美,それと雅也っ」
そう言いながら,
花梨はさっさと教室を出て行った。
続いてすぐに椅子から飛び出して
雅也もお姉さんの後を追って出て行った。
「あ,待って…。」
琴美も地味に失礼しますと頭を下げ,教室を後にした。
そして,今の話を聞いていた生徒たちが騒ぎ立て始めた。
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